FEATURE

2022.12.16

修理という文化が
みんなの日常の一部となれたなら
無理なく“つづく”が実現できる

地球に、人に、動物に優しいことを、と言われるとなんだか壮大で難しそうだし、建前だけじゃ続かない。
でも、ワクワクを諦めたくない私たちにだってほんの少し視点の切り替えをするだけでできる何かはきっとあるはず。
そんな“つづく”のリアルなヒントをBEAMSスタッフの日常から切り取る連載企画。
今回登場するのはビームス・トランスファー・センターで働く大串圭介。
全国のビームス店舗から届く修理依頼品を長く扱ってきたからこその視点をご紹介します。

 

服のリペアやアクセサリーの修理、靴のソールの交換、腕時計の修理など取り扱う内容は多岐に渡る。それぞれに合う専門業者に依頼し、スピード感をもってアフターケアを行うことを心がけている。

 

 

「私の所属する“修理チーム”はアフターケアの窓口。全国のビームスでお客様から修理依頼されたものが集まってくる場所です。洋服はもちろん、腕時計、アクセサリー、靴など様々な種類のアイテムを200から300ほど同時に扱い、メーカーに見積もりや修理を依頼しています。 ここを担当して十数年。日本は、例えば「違う生地の当て布をすることに抵抗がある」など修理自体中々受け入れていただけないのが現状です。そんな理由も相まって職人さんは高齢化が進んでしまっている。でも今、モノを長く使おうというひとりひとりの意識は以前より高まっていると思うんです。洋服がやぶれたりほつれたりしたときに交換または返品希望をされる方も多くいらっしゃるのですが、修理の価値がもっと上がって日常化し、修理跡も楽しめるような文化になれば、後継者問題も環境問題も改善できると考えています。」

 

ジャケット/BEAMS PLUS〈ENGINEERED GARMENTS(エンジニアド ガーメンツ)〉
パーカー/BEAMS
インナー/古着〈ANATOMICA(アナトミカ)〉
パンツ/Pilgrim Surf+Supply〈ENGINEERED GARMENTS〉

 

 

週末は子どもの靴を洗うのが習慣です。着ているフィッシャーマンスモックは10年前に購入したものなのですが、デニムが色落ちしてきたのでお取引のある外注業者へ黒に染め直ししてもらいました。

 

妻と子どもたちがペットボトルで作ったおもちゃたち
お気に入りのハンカチたちの中には10年選手も

 

「正直なところプライベートで“つづく”のためにそう大きなことはできていないと思います。ただ、このアフターケアの仕事を長くしてきたからか、モノを大切にしようという思いは心の片隅にいつもあるのかもしれません。例えば服なら、負荷を最小限にしたいので極力洗濯をせず、洗濯機に入れるときにもネットに入れて陰干し。また、洋服を購入する際にはシンプルなデザインを選ぶように心がける。そうすると大人は長く着られるし、すぐサイズアウトする子どもたちの洋服もおさがりに活用できるんです。もっと日常的なことでは、ハンカチを必ず携帯してティッシュペーパーを極力使わないようにしたり、段ボールやペットボトルをすぐに捨てずに子どもと遊び道具を作ったり、肉や野菜などは生産元が見えるところで買う、などは習慣化しています。日々の生活を少しだけ丁寧に過ごせるよう心がけることで、無理のない”つづく”を実現させられるのではないでしょうか」

 

トップス/〈POST O’ALLS(ポストオーバーオールズ)〉
インナー/古着〈ANATOMICA〉
パンツ/Pilgrim Surf+Supply〈ENGINEERED GARMENTS〉
シューズ/〈CONVERSE(コンバース)〉

 

 

 

「最近は部内での知識を広げるため、外部の専門家の方をお呼びして勉強会を開くことも始めました。専門の業者の方にお願いするにあたって、私たちもある程度の知識があった方が依頼の意思疎通がしやすいということに加え、ゆくゆくは複雑でないものに関しては私たちの手で修理を行えるようにしたいと考えています。また、今後は店舗スタッフが修理依頼をされるお客様に直接提案できるようになることを目指し、修理チームから店舗スタッフに向けての修理講習会も今後増やしたいです」

 

 

「こちらは妻が昔から大切にしているネックレス。子どもがまだ赤ちゃんだった頃、抱っこしたときに引っ張ってチェーンが切れてしまいました。もう抱っこすることも少なくなったので、またアクセサリーを身に付ける楽しみが増えそうとのこと。修理して使い続けると色々なストーリーが増えて、購入したときよりもっと大切なものになっていく。その感覚をお客さまにも体感してほしいです」

 

 

これからの私の”つづく”

今興味があるのは家庭菜園。「家族の好きな野菜を自分の栽培方法で一緒に作れば楽しく食育できて子どもの食べ残しも減るのでは?」、という思いから始めました。また、以前より魅力的なデザインの電気自動車が増えたので買い替えたいなと。これから妻に要相談ですね(笑)。

 

Ogushi ‘s recommendation list

ハッピーケアメンテ®

衣類へのダメージを最小限にしながら汚れを落とす独自の水油系洗浄方法を行う会社。くたびれてしまった高価な服や鞄を再生産技術で新品のように蘇らせ、個人間で売り買いできる中古ファッションフリマサービス『Happyサイフル®』が2022年から始まり、注目しています。https://www.kyoto-happy.co.jp

REPRO-PARK

様々なスニーカーのリペアやカスタムをオンラインで受け付けてくれます。眠っていたスニーカーが自分だけの特別な1足に生まれ変わると思うとワクワクします。https://repropark-sneakers.jp

アルマボレアリスのパズルウェア

イギリスのキッズ服ブランドが販売している、子どもが自分の服をDIYできる手芸キット。何度も縫い直しできるから、成長に合わせてリサイズもできるそう。まだ購入できていないのですが、4歳から12歳までが対象と聞き、我が子にも贈りたいと考えています。https://www.almaborealis.com

 

PROFILE

  • 大串圭介

    1975年北海道生まれ。30代で上京し、アルバイトを経て2008年BEAMSに入社、ロジスティクス本部に勤務。休日は、7歳の娘と4歳の息子を連れて郊外の広い公園に遊びに行くことが楽しみのひとつ。父が美容師だったこともあり、勝手にその遺伝子を受け継いでると思いながら子どもの散髪に奮闘中。

Photo:Kazuhiro Fukumoto〈TAKMI〉 Direction:Takako Shirasawa