ISSUE

Leather Wallet

GUEST

Daisuke Motoike

from MOTO

2019.07.12

PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

VOL.11

<BEAMS PLUS>のワードローブになくてはならない
普遍的なアイテムを作ってきた識者たちの、
見解やエピソードから紐解く知られざる魅力。
それは過去の名品を未来のスタンダードへと
紡ぐために必要なストーリーであり、
<BEAMS PLUS>が大切にしたい新しいフィロソフィー。

vol.11

本池大介(モト・デザイナー)1974年生まれ。オーダーメイドによる革製品ブランド<LEATHER ARTS & CRAFTS MOTO(レザーアーツ&クラフツ モト)>を手掛けると同時に、革人形作家としても活躍する本池秀夫氏を父に持ち、幼少期よりレザークラフトに触れて育つ。20歳でイタリア・フィレンツェへと渡り、ファインジュエリーの工房にて彫金技術を学ぶ。帰国後の'97年、弟の作人氏とともに<LEATHER & SILVER MOTO(レザー&シルバー モト)>をスタート。2013年には親子2代にわたって培われたノウハウを継承しながら、新たな挑戦と実験的な試みを目的とするプロジェクト<MOTORATORY(モトラトリー)>を始動。

機能や数値では測ることのできない
エモーションに惹きつけられる

お金のカタチとともに進化を遂げてきた
そして時代性も大きく映し出される

「財布の歴史はあまりに長く、自分が知る限りでは、少なくとも紀元前2500年くらいには存在していたようです。現存するそれを写真で見ると、獣の牙が無数に飾ってあり、どう使うのかすら理解できないものですが、その時代から素材はレザーでした。

より財布らしい財布の起源は、やはりヨーロッパです。お金が硬貨しかなかった時代は、レザーの袋に入れていた。それが1600年代に紙幣が発行されると、小銭と札を整理して入れられる現在の形状に近づきます。その後、1950年代にクレジットカードが登場したことで、多くの財布にカードポケットが追加されました」

「一方、まだクレジットカードがなかった'20~'30年代の欧米では、家族写真を入れられる小窓の開いたポケットが付いているタイプが多かった。今では見られなくなった文化的な機能です。現代はスマートフォンがその役割も担っているのかもしれません。

小銭・札・カードと収納するモノが決まった後は、そのなかでトレンドが生まれるようになりました。容量が多く、ポケットが豊富なほど優秀とされた時代がありましたが、最近は電子マネーなどによるキャッシュレス化に伴って、サイズの小さいミニマルな傾向です。洋服と同様にウォレットにも世の中の流れが反映され、進化と変化を重ねてきました」

(右)2007年に自身のために製作した非売品のミニ財布。
(左)これをベースに馬革を採用した<BEAMS PLUS>別注の “ ポケット ウォレット ”。

「ただ僕の場合、そうしたトレンドに対して天邪鬼になることも。大きなウォレットが流行していると、たまには小さなタイプもつくりたくなる。それでロングウォレットが全盛だった2007年、自分のプライベート用にミニウォレットを製作したんです。当時、商品化することはありませんでしたが、あれから12年が経ち、今<BEAMS PLUS>で販売されている別注モデルの原型になりました。

財布は現金・カード・領収書と入れるモノが決まっていて、それを整理して持ち歩く利便性を考えると、ここの仕様はこれが一番といった固定概念にとらわれがちです。しかし、制約のなかでいかに工夫するかがデザイナーの創造力とクラフツマンの腕の見せどころ。僕は、意外と自由度が高くてクリエイティビティを掻き立てられるアイテムだと思っています」

<BEAMS PLUS>別注による馬革のジップウォレット。

大切なモノは大切な素材に入れる
その文化は太古から現在まで続いている

「その歴史を振り返ると、財布が初めて誕生した時代、確認できているだけでも4000年前から現在まで、素材はレザーが主流です。もちろんナイロンなどファブリックのウォレットが人気を集めた過去もありますが、世の中のポピュラーは変わらず革であり続けています。

しかし現代には軽量で丈夫、発色も良く、色移りもしない優れたマテリアルが、ほかにいくらでもある。にもかかわらず、高級メゾンからファストブランドまでが革財布を発売し、多くの人々に選ばれている。言うまでもなく現金やカードは貴重品ですし、レザーもまた価値ある素材として根付いています。大切なものは大切な素材に入れる感覚が心のどこかにあるのかもしれません。同時に、天然素材ならではの温かみも大きな魅力です。手に触れると安心や落ち着き、癒し、リラックス効果みたいなものを感じられる。僕自身もエモーショナルな素材だと捉えていて、機能や数値だけでは測れない、不思議な魅力に取り憑かれた一人です」

旧態依然とした業界で存在感を示すべく
若い作家がレザーの新たな価値を生んだ

「革業界は長年の信頼関係や資本力が最重要視されるので、ブランド設立当初はスペシャルなレザーをつくりたくても聞き入れてもらえません。なので、タンナーから仕入れた既成の革を自分たちの手で二次加工を施してオリジナルに仕上げていました。製品づくりの前、素材の段階からスタートする我々のものづくりのスタンスは、基本的に今も変わりません。苦肉の策として始めたことが結果的に<MOTO>の強みになっています。

とはいえ、ここ10年ほどで時代も変わり、我々のような小規模ブランドにも目を向けてくださるタンナーが増え、ワガママなオーダーや新しい素材開発もある程度は可能になりました。ただ<MOTO>の場合、まったく新しいものを生み出すというより、既存の要素を取り除くといった注文をすることがほとんどです。何かを付加するのではなく、完全には仕上がっていない少しでも原皮に近い状態、鞣し終わった極力ソリッドなレザーが欲しい。仕上げは自分たちで作業したいので。

経年変化を追求すると、そこに辿り着きます。多少のキズや汚れは許容するので、それらを化粧で隠していない可能な限りナチュラルな状態、いわば “ スッピン ” の革です。こうすることで、お客様が使い込む過程で素晴らしいエイジングを味わっていただくことができます」

「おそらく無化粧レザーでジップ式のロングウォレットを発売したのは、<MOTO>が先駆けだったと自負しています。かつてジップ式のロングウォレットは、女性のアイテムという立ち位置でしたが、カリフォルニアのゴシック調のシルバー&レザーブランドが男っぽいジップ式のロングウォレットを提案して市場を広げました。一方、ヌメ革の長財布といえばレザーが分厚く、コンチョが付くなど無骨なムードで、バイカーカルチャーのアイテムだった。そこに僕らはヌメ革を使いつつもスマートなフォルム、品の良いデザイン、それでいてバイカーウォレットのようにアメ色に育つ、従来にはないスタイルを発表しました。

<MOTO>に限らず、'80年代以降に評価されたレザークラフトのブランドは、既存のシステムに入り込む余地がなく、そのなかでいかに存在感を出そうと模索した結果、独自の解釈でレザーを捉え、若い作家の感性と価値観で新たな表現を生み出したところが多いと思います」

7月末から開催する<BEAMS PLUS>でのイベント用に別注されたトートバッグのサンプル。

「僕個人はここ数年、特に馬革に熱を上げています。7月末には<BEAMS PLUS>で、国内外のタンナーから集めた様々な馬革でバッグをカスタムオーダーできるイベントも開催予定です。実は10年ほど前まで、精力的には馬革を使いませんでした。原皮の形状が独特なうえに繊維も粗く、馬は走り回るのでキズも多いため、製品にするのが難しいんです。何より特有のツヤがラグジュアリーでいやらしく思えて、<MOTO>の世界観にはマッチしにくいと決めつけていました。

ただタンナーとの関係が深まり、僕らのオーダーを受け入れてもらえるようになるなかで、化粧された既成の馬革とは違う、スッピンのホースハイドを開発したのを機にイメージが一変した。若い頃は苦手だったツヤが醸し出す色気も、年齢を重ねたことで魅力的に映るようになり、使い込んで出てきたツヤからは馬本来のポテンシャルを味わえる。かつて敬遠していた反動か、最近は馬革に夢中です」

イタリアやアメリカ、日本など世界各国の名門タンナーから選りすぐられた馬革のバンチ見本。

喜び、感動を与えられないと
レザーグッズの存在価値はない

「現代には安価で優秀なマテリアルがいくらでもあります。となると、使うことで何かしらの喜びを得られないと、わざわざ革を選ぶ理由なんてないし、ひいてはレザーグッズには何の存在価値もありません。例えば百貨店の全盛期には、キズや汚れ、個体差、色移りなど何でも NG で、タンナーは化粧に化粧を重ねた厚化粧のレザーを供給していました。すると、革本来の持ち味が徹底的に塗り潰され、本革である必要がないといった疑問が生まれた。それで、お客様が革製品から随分と離れたんです。デコラティブだったメゾンブランドのウォレットもミニマルになり、革自体の品質や素材感で魅せる傾向が強くなりました。

財布はファッショングッズであると同時に、お金を持ち歩く道具です。ですから、使い勝手の追求は大前提にあります。そのうえで今日においては実利的なメリットが見えにくい革を選んでいただくには、ほかの素材では得られない温もり、感動、心にグッと訴えかけられるプロダクトでないとなりません。そこが僕らの命題であり、それを感じられるのがレザーウォレットの醍醐味。そして人々が革を愛でる最大の理由ではないでしょうか」

EVENT info.

LEATHER ARTS & CRAFTS MOTO
Atelier at BEAMS PLUS

2019年7月27日(土)~8月4日(日)まで「ビームス プラス 原宿」にて<LEATHER ARTS & CRAFTS MOTO>のアトリエの世界観を体感いただけるイベントを開催します。期間中は<BEAMS PLUS>が型から別注したホースハイドのレザートートバッグを発売。ホースハイドの豊富なバリエーションに加え、ハンドペイントを施したモデルなど、本イベントのために製作したスペシャルな1点物のレザートートバッグが一堂に揃います。イベント初日の27日はデザイナー本池氏がお店立ちし、その場でコンチョのカスタムを行います。

MORE INFO
Shop Info.

今回ご紹介したアイテムは<BEAMS PLUS>の各店舗で取り扱い中です。

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JPEN
PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

volume.11