ISSUE

M-51

GUEST

Kimitoshi Chida

from sage de cret

2018.05.16

PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

VOL.04

<BEAMS PLUS>のワードローブになくてはならない
普遍的なアイテムを作ってきた識者たちの、
見解やエピソードから紐解く知られざる魅力。
それは過去の名品を未来のスタンダードへと
紡ぐために必要なストーリーであり、
<BEAMS PLUS>が大切にしたい新しいフィロソフィー。

vol.04

千田 仁寿(サージュデクレ・デザイナー)1966年生まれ。1980年代のDCブームでファッションに目覚めて上京。ファッション専門学校を卒業し、トラディショナルなテーラード系を得意とする会社でクロージングの基礎を学び、1990年からはデザートで、ワーク・ミリタリーをベースとした独自の発想によるものづくりを学ぶ。2000年にギャラリードポップに入社し、<sage de cret(サージュデクレ)>をスタート。2011年にパリ、2012年にはニューヨークの合同展示会に参加。<BEAMS PLUS>での展開は2003年から。

大きなカーゴポケットやフラップ、
コットンの進化が
M-51 フィールドパンツの
すべてを象徴しています。

国の経済や軍の力によって、
ミリタリーウェアは進化していく

「一般的にミリタリーウェアと聞けば第二次世界大戦以降を思い浮かべる方が多いと思いますが、歴史を振り返ると第一次世界大戦頃のそれは、イメージと大きく異なります。現存する当時の資料が、将校などの写真が多いこともありますが、当時の軍服はジャケットやスラックスから進化したクロージングの要素が採用されていました。そしてヨーロッパ諸国の中でも強国と呼ばれていたドイツ軍には、良いミリタリーウェアが多く存在しています。時代によって国の経済や、軍の力でミリタリーウェアの機能やディテールは大きく異なります」

「第二次世界大戦をきっかけに軍服の概念が大きく変化しました。アメリカ軍は巨額の資金を投資して研究を行ない、その期間で生み出された軍服は、大量生産され、多くの兵士に支給されました。その量はヨーロッパとは大きく逸していたと思われます。縫製の仕様も、例えばイタリア軍には、まるで仕立てられた服のように1本のステッチで繊細に縫われているものが多い中、アメリカ軍では大量生産に必要な効率や耐久性を考え、ジーンズと同じチェーンステッチが採用されていました。これらのヨーロッパ諸国とアメリカ軍との違いは、パンツだけでなくフィールドジャケットなどからも確認できます。デザイナーとして、とても興味深いディテールです」

目的をもったディテールに、関心を抱き、
魅了されていきました

「M-51とは名の通り1951年に誕生したもので、後継のM-65が開発されるまでのもの。その前身にあたるM-43やM-47を継承しながらも、大きなカーゴポケットが特徴で、中には止血するためのストラップとして、または夜戦時にポケットの中身が当たった際に音が出ないよう縛ったり、人を引っ張るために使われたストラップが採用されました。そしてポケットのボタンにフラップが被さっているのは、ほふく前進する際にボタンがとれないように配慮されたものだと聞いています。僕は戦争を経験していないので、ファッションの視点で見ていましたが、ディテールの目的を知ることでミリタリーウェアに深く魅了されていきました」

未来にミリタリーウェアを残すために、
現代的な要素と融合していく

「オリジナルに忠実なままでは、ただの骨董品となってしまう。そのため<sage de cret>でも、ディテールやパーツの意味を正しく知った上で残すべき箇所は残しつつ、日常生活では使われないパーツは省略して、現代的にアレンジをしています。僕がファッションに興味をもつきっかけとなったDCブランドの服も、ミリタリーの要素を取り入れていました。そんな行為を繰り返すことで、ファッションにおけるミリタリーというジャンルを残すことができると考えています」

「今回のコラボレーションでは、M-51のフィールドパンツとオーバーパンツの要素をミックスしました。ウエストのコードはオーバーパンツから拝借し、今回のためにオリジナルのストレッチ素材を開発して、コンフォートと呼ばれるはき心地の良さや時代性も意識しています。<BEAMS PLUS>からは武骨に見えつつも、街着として成立したデザインを求められることが多いので、裾に向かってスッキリと見えるテーパードシルエットも提案しました。M-51は既に完成されている素晴らしいアイテム。だからこそ、ディテールやシルエットのバランスを非常に大切にしながら、新しい提案を常に試みています。」

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PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

volume.04