ISSUE

Coverall Jacket

GUEST

Takeshi Ohfuchi

from Post O'Alls

2018.12.18

PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

VOL.07

<BEAMS PLUS>のワードローブになくてはならない
普遍的なアイテムを作ってきた識者たちの、
見解やエピソードから紐解く知られざる魅力。
それは過去の名品を未来のスタンダードへと
紡ぐために必要なストーリーであり、
<BEAMS PLUS>が大切にしたい新しいフィロソフィー。

vol.07

大淵 毅(ポストオーヴァーオールズ・デザイナー)1962年生まれ。東京出身。25歳でN.Y.に渡米。1993年1月にラズベガスの合同展示会MAGICショーで<Post O'Alls>をデビュー。古き良きワークウェアやワークウェアの基盤から派生した機能服へのリスペクトをルーツに、オーセンティックなディテールや縫製や生地など様々なスタイルをミックス。独自のキャラクターを仕込むことで、ヴィンテージに匹敵し、ヴィンテージと合わせて着ることができる、新しいタイムレスな服作りを続けている。2019年SSより東京に拠点を移して始動。

流行ったとしても流行りきらない
世間との微妙なズレがあるところに、
カバーオールに魅せられた理由がある

1920年代に入って、アメリカらしさが
カバーオールにも表れるようになった

「僕がまだ仕入れや集めているときに持っていた最も古いカバーオールが、1900年前後のものでした。薄手の平織りで、シャンブレーっぽい生地感のギンガムチェク。デザインはシンプルで、ホームベース型のパッチポケットが3つ付いた、オーバーオールとセットアップのものでした。この頃のものはヨーロッパのワークウェアに少し毛が生えた、いや毛があまり生えていないというか、欧州の影響を受けたパターンやディテールばかり。アメリカらしさが色濃く帯びてきたのは、おそらく第一次大戦頃から1920年代にかけてではないでしょうか。アメリカの衣服の流れとカバーオールの歴史は、概ねシンクロしていると思います。」

「カバーオールは和製英語で、本来の意味はおそらく「ツナギ」です。日本が指しているのは、チョアジャケット、レイルロードジャケット、エンジニアジャケットなどと呼ばれています。これは1919年でしょうか、アメリカ北西部のきこりの写真ですが、おそらく<PAY DAY>の古いエンジニアジャケットです。特徴は、袖口がエンジニア・カフスになっている。おそらく筒の長い手袋を上から被せてしまうためでしょう。この頃は既にラグランスリーブも作られていました。シャツっぽい仕立てもあれば、ジャケットのようなAラインの仕立ても存在しています。着こなしのルールは特に感じられません。中にセーターを着ることもあれば、オーバーオールの中に着ることも、上に着ることもあります。さらにもう一枚カバーオールを羽おった着こなしも写真に残っています。作業着ですから、適当だったと思います。」

「僕にとってアメリカらしい部分とは、ラベルが表についていたり、ボタンに名前が入っていたりと、ブランドの宣伝が服に入っているところ。あとはトリプルステッチやチェーンステッチで縫われていたり、全体のデザインのまとめ方などからも感じます。1930年代に入ると4つポケットが増え、カバーオールのデザインの基礎が確立されました。下襟が大きくなる、シェイプが強くなるなど時代に沿った変遷もありました。当時は、カジュアルウェアが存在していない時代ですから、こういった作業着に時代感を取り入れていたと思います。<Lee>がデザインをリードしていた訳ではないですが、ディテールの進化は他のブランドよりも早かった。そして意外にもストアブランドが、流行に乗っていたように思います。」

写真家、ダリアス・キンゼイがカメラに収めた
アメリカ西部開拓時代の写真の数々に、
ワークウェアの歴史が詰まっている。

見たことないカバーオールは
まだ世界にたくさんあるはず

「第二次世界大戦に入ると、物資統制によりディテールが大幅に簡素化されました。このあたりは、他のデニムメーカーと同じ流れですね。ボタンがシンプルになり、ポケットが2つになったり、ステッチの数が減り、工程が少なくなるなどシンプルで癖がなく、力の抜けた感じが個人的にも好きです。一方でショールカラーに代表されるUS NAVYのカバーオールは、ワークウェアの流れではなく、海軍なだけに前から見たセーラーカラーを意識したデザインではないでしょうか。

戦争が終わるとアメリカにカジュアルウェアが普及したことで、作業着が日常着でなくなりました。だからカバーオールにもトレンドが反映されず、実用的なデザインになり、現代まで続いています。それ故に、マシン・エイジという時代の流行とワークウェアのインダストリアルな部分が融合した1920〜30年代の頃の製品は、ワークウェアの黄金期ともいえるパワーを感じますね。

いろいろなカバーオールに出会い、着てきましたが、特に好きなブランドや年代はありません。偶然着て良い感じのもの、が好きです。僕はコレクターではないので、珍しいだけが価値のすべてとは思いません。いろんなスタイルに合わせやすいデザインに惹かれます。今日着ている服も、ブランドは不明です。おそらく大戦中のもので、最近日本で見つけて買いました。ブランドを始める前から、2ポケットでチンストラップが付いた服は存在しないだろう、でもあればいいなと思っていたら、今になって偶然発見しました。未見のデザインは、まだ世界にたくさん眠っているでしょう。」

知り合いの古着店で偶然見つけた1940年代のカバーオール。
2つポケットにチンストラップ付きは初めての出会い

貧困層や若者の労働者を撮影し、
社会改善を投げかけた写真家であり改革家、
ルイス・ウィッケス・ハインの写真集より。

理想を組み合わせて一枚の服に。
年代がわからない、それが理想。

「アメリカ服に開眼したのは、中学生の頃でした。当時はアイビー全盛で、父はアメリカで<BROOKS BROTHERS>や<Florsheim>などを買って着ていました。その頃は日本の<VAN>や<KENT>の方がかっこいいな、と思っていましたが、後にMADE IN USA CATALOGが発売されて、影響を受けましたね。カバーオールに興味をもったきっかけは確か、原宿のサンタモニカでたまたま購入したもののクオリティの高さに衝撃を受けました。それが戦前のものだと知ったのは後のことですが、<Levi’s®>とは違う世界というか楽しさがあると思いましたね。1980年代半ば頃までは、都内の古着屋でも<Lee>などの有名なものを探している人が少し、無名のものを探している人などほとんどいませんでした。そして25歳でN.Y.に移住し、全米中でヴィンテージを探しましたね。ブランドの違いはありますが、全域で掘り出せるイメージがありました。とくに東海岸はまだ日本人もあまり入っていなかったし、アメリカの古着屋はハワイアンシャツやギャバジンシャツなど、ハリウッドっぽい服を買い付けていたので、ライバルは少なく、割と見つけやすかったと思います。」

アメリカの工場内での写真。カタログに掲載されている。

「ファッションとして成立させるために意識していることは、流行に乗らない、もしくは乗る時期をずらすことでしょうか。僕はかっこよさを求めて作られていないカバーオールが好きになった訳ですから。流行らない、流行ったとしても流行りきらない世間との微妙なズレがあるところに、僕が魅せられた理由があると思います。渡米する前と30年が経った今、時代や環境が変わっても、着たくなるのがカバーオール。ヴィンテージにインスパイアされながら、常に「当時こんなデザインがあったら」をかたちにしているので、何かをそのまま再現した服は、あまり作ったことがありません。例えば100年後に見たときに「いつの頃の服かわからない」と思ってもらえるカバーオールが<Post O'Alls>の理想ですね。」

薄手の5オンスのデニムを使用した新作。
ポケットは2つ、身頃のパッチもアメリカらしい。

4つポケットの新作。ワークウェアの定番である
コバートクロスにインダストリアル感が漂う。

Item Info.
Post O’Alls
COVERALL JACKET

(Left) POST 40
Color : DENIM / Size : S , M , L / Price : ¥46,000+tax
(Right) ENGINEER’S JACKET-XXR
Color : GREY / Size : S , M , L / Price : ¥52,000+tax

Shop Info.

今回ご紹介したアイテムは<BEAMS PLUS>の各店舗で取り扱い中です。

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JPEN
PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

volume.07