ISSUE

Luggage Wear

GUEST

Setsumasa Kobayashi

from .....RESEARCH

2019.08.29

PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

VOL.12

<BEAMS PLUS>のワードローブになくてはならない
普遍的なアイテムを作ってきた識者たちの、
見解やエピソードから紐解く知られざる魅力。
それは過去の名品を未来のスタンダードへと
紡ぐために必要なストーリーであり、
<BEAMS PLUS>が大切にしたい新しいフィロソフィー。

vol.12

小林節正(.....リサーチ・代表)1961年生まれ、東京都出身。フリーランスのシューデザイナーとして数々のブランドに携わった後、1994年に自身のブランド「GENERAL RESEARCH(ジェネラルリサーチ)」をスタート。2006年以降は、一つのテーマにフォーカスした入念なリサーチによって既存のアイテムを再構築する「.....RESEARCH」という発表形態及びプロダクト展開に移行。異なるタイトルによる数々のプロジェクトが存在する中で「MOUNTAIN RESEARCH」は山暮らしの実践で得たフィールドテストがフィードバックされる核となるプロジェクト。

俺にとってのラゲッジウェアは
機能の先にある、感情的なもの

大量生産が生んだ米国のカジュアルウェアには
商品としてのアイデアが盛り込まれている

ジャケットやシャツといったアイテムの分類に縛られず、大容量のポケットが付いていて、物をたくさん入れても歩ける設計になっていれば、それは俺にとってラゲッジウェア。例えばハンティングの時に使われるゲームベストは、獲物を運ぶためのものでしょう。これは自分が考えるラゲッジウェアのイメージに一番近い、原初の感じです。ハンティング、あるいはミリタリーも基本的に両手がふさがっている状態での使用が想定されているので、ラゲッジウェアとしての機能を持たせざるを得ない。こういった服が製品化されるのは、基本的に1940年代あたりから。オーダーメイドの時代が終わり、プレタポルテが登場し、その最右翼とも言えるスポーツウェアが製品化され始めてっていう。だから50sあたりからは色々と増えて面白くなったんじゃないかな。

服がテーラードの領域だった頃は、格好良く見えることや綺麗に見せることが重要だったはずで、服のデザインはデザイナーのアイデアで具現化されるものだったけど、大量生産が始まった50s以降は製品の時代を迎えて、商品としてのハンティングウェアやミリタリーが作られるようになった。結果、物を運んだり弾をたくさん入れるとか、商品としてのアイデアが服に落とし込まれるようになる。第二次世界大戦で焦土にならず国土が保全されたアメリカではこんなふうに趣味を背景にしたものが発展し、スポーツカジュアルの良い時代を迎えることができたんだね。

ハンティングのゲームベストにはいくつもの形がありますが、ポケットの中に荷物を格納して歩くことを突き詰めると、こういったベストのように身頃の上部分がないデザインになるでしょう。洋服の形を残しながら、ここまでズバっと割り切りの良い服は、アメリカ的で面白いと思います。あとラゲッジウェアとして面白いのは、第二次世界大戦後の朝鮮戦争や、ベトナム戦争あたりに発展したサバイバルベスト。これはC-1ベストと言いますが、いろんなギアを格納して身体に装着するためのデザイン。どのポケットに何を入れるかが指定されていて、中に入れるものの大きさに合わせて各ポケットが設計されている上に、フラップやポケットにはご丁寧にも入れるものがスタンプでインストラクションされている。この徹底っぷりは、より厳格にデザインされているっていうことで興味深い。

フラップにはうっすらとインストラクションが

L.L.Beanのハンティングジャケットは、主に60〜70年代ものを蒐集

ポケットが特許を取得しているかはわかりませんが、おそらく70年代製の<L.L.Bean>のジャケットに多いこのデザインには、一番心が惹かれます。上下のポケットが真ん中で仕切られていて、一つは下のポケットのフラップとして機能していて、なんといっても全体のプロポーションがいい。ミリタリーもハンティングも、ポケットのマチの設け方などのテクニックはこの頃既に出尽くした感があるんだけど、進化という意味ではベルクロが出てきて、樹脂やコイル製のファスナーが登場することで、フラップの閉じ方にはもうふた転びくらいの転換があったように思う。何かのタイミングで大リニューアルが一気に起こり得るミリタリーでは、全ての規格が変わって使用を義務付けることができるけど、個人の観念で装備して、一人で野山を過ごすようなハンティングは、そう簡単にことは運ばない、個人の視点によるギアや服に対する信頼性が重要だから。そんなこともあって、軽いのはいいけど壊れやすいプラスティックがOKだと思われるまでに少し時間がかかったんじゃないかな。

アトリエに吊るされている、
無数のハンティングベストとフィッシングベスト

行き着く先はわからないけど、
ポケットが面白いパターンは全部買っている

別にラゲッジウェアとして集めているわけではなく、基本的に服はやっぱりカジュアルになった50年代以降が好き。面白いポイントはポケットだと思うんだよね。形に始まって、取り付ける位置、フラップの付け方とか。長年こういったものを集め続けてきた自分の行き着く先はわからないけど、ポケットが面白ければ全部買ってる(笑)。その結果、ハンティングとミリタリーとフィッシングが集まってしまった。今でもちょこちょこ買い足してるんだけど、ここには妙なものがあるだけで、希少なものが集まってるってわけではないですよ。それでも見たことのないポケットはまだ山ほどあると思います。今はトラベルグッズ店に行けば、携帯品をたくさんしまっておける収納服はたくさんあると思うんだけど、俺のいうラゲッジウェアはもうちょっと感情寄りな、別のところにあります。機能だけを考えたものは頭になくて、<BEAMS PLUS>の別注は今話してきたようなアイデアやアーカイブが複合的に組み合わさった末に出来上がったもの。

各パーツに営業ポイントがプリントされたセールスマンサンプル

直接的なきっかけとなったC-1ベストのインストラクションは、平和な時代に置き換えると、入れてもらいたいものをこちら都合で自由に設定できるわけじゃない? デザイナーはデザインというメッセージで服を作るけど、そこにもう一つ、耳元で囁くようなうっとおしい感覚を今回のプロジェクトでは楽しんでいます(笑)。花を挿すといいよね?とか、リップルが入るといいよね?とか。グレイトフルデッドの曲に入っている言葉も使ってみたり。実際に入る、入らないは別として、ポケットには色々なものを詰めたいよね、という話、観念的なものも含めてね。ポケットの形状に関しては自分の好きなデザインをあちこちから持ってきて転用してっていう。あとは、アメリカには営業の人が持ち歩くためのセールスマンサンプルっていうものが昔はあったんだけど、このシャツにはセールスに必要な売りのポイントがプリントされていて、そういうところも面白いなって、これもアイデアソースのひとつになってます。

シャツに関してもハンティングがソース。ベースになっているのは大きなマチ付きのポケットが胴回りを一周している、おそらく70年代だと思う<RED HEAD(レッドヘッド)>のシャツ。俺が持っているこれには袖はついてないけど、ひょっとしてボタンで取り外しが可能な袖がついていたのかな、と勝手にストーリーを作ってみました。耐久性の問題や着る頻度からいって、ジャケットよりシャツの方が残っている古着のピース数が少ない。似たものはたまに出くわすけど、このシャツだけは同じものを見たことがない。袖先が付いているのを見てみたいんだけどね。

袖先にはボーイスカウトと思われるワッペンの跡

どこか浮いて見える異物感に
ファッションの原点がある

80年代の頃、デイパックが大流行りしたけど、毎回肩から降ろして開け閉めするのが面倒じゃない。やっぱりベストが一個あると楽だから、釣りのベスト着て街を歩いていたかな。<Columbia(コロンビア)>のフィッシングベストの黒や赤が、韓国製で出た85年とか86年頃は「プロペラ」でも売ってたりして、割と自分の周りの皆は着てたよ。プルオーバーのシャツの方が身幅や丈感が合うから、アラブの人たちが着ているような長い丈のシャツを自分たちで切って縫い直したりして。釣りのベストはバランスを考えないと、上手く着こなせないからね。この辺の着こなしで有名なのは、ヨーゼフ・ボイス。アンディ・ウォーホルも釣りのジャケットを着て中国旅行している写真があったかな。どちらも異物感を漂わせながらベストを着ているから「なんだろう」って気になるわけじゃん。あの浮いている感じが俺にとってのかっこよさの原点だと思う。なにぶん釣りをやらないのでいまいちポケットの用途がわかっていないし(笑)、具体的なことを何も知らないからこそ、違和感として楽しめるんだろうね。そういえば、<SEDITIONARIES>も、80年代に<Abercrombie & Fitch(アバークロンビー&フィッチ)>のフィンシングベストをソースにしたものを作っているよ。パンクは基本的にすべて異物感だらけだから、この目のつけどころは至極納得が行くところ

SEDITIONARIES(セディショナリーズ)の作品を収めたビジュアルブック

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JPEN
PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

volume.12