ISSUE

5 Pocket Denim Pants

GUEST

Kenichi & Koji Shiotani

from WAREHOUSE

2019.12.13

PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

VOL.13

<BEAMS PLUS>のワードローブになくてはならない
普遍的なアイテムを作ってきた識者たちの、
見解やエピソードから紐解く知られざる魅力。
それは過去の名品を未来のスタンダードへと
紡ぐために必要なストーリーであり、
<BEAMS PLUS>が大切にしたい新しいフィロソフィー。

vol.13

左/塩谷健一 右/塩谷康二
(ウエアハウス・ディレクター)
1973年生まれのツインズ。ともに<EVISU JEANS>を経て、'95年、21歳の若さで<WAREHOUSE(ウエアハウス)>を設立。「限りなきディテールの追求」をコンセプトに、ヴィンテージを忠実再現した5ポケットのデニムパンツを発表し、瞬く間に頭角を現す。以降、ジーンズをはじめとする古き良きアメリカンカジュアルを題材としたトータルアイテムを提案。時代背景を考察し、原綿から糸の1本、生地や縫製、加工にいたるまで、ストイックに探究するスタンスは間もなく25周年を迎える現在も変わることなく、国内はもとより本場・アメリカなど海外でも高い評価を集める。

時代によって変化を繰り返しながら
常にカジュアルの主役であり続ける

アメリカの黄金期=ジーパンの黄金期
そして後世のベンチマークになった

健一「<BEAMS PLUS>のコンセプトである “ 1945~65年のアメリカ ” は、すなわち米国の黄金期を指しています。それは同時に、150年近くに及ぶジーパンの長い歴史においても黄金期と呼べる20年間です」

康二「例えば<Levi's>では、ヴィンテージジーンズの王様である 501XX の時代。<Lee>であれば、ヒップポケットのステッチが従来のアーキュエットに代わって現在まで続くレイジーSになり、レザーパッチも現行のデザインに変更され、代表作である 101 に赤タグが採用されていた頃です。さらに<Wrangler>は '47年にデビューし、看板品番の 11MWZ が登場。そのラベルから母体であるブルーベル社のマークが消えた '65年を境にして、一気に大量生産へと突き進んだ」

健一「こうして3大デニムブランドだけを見ても、ひときわ眩しい輝きを放っていたのが '45~65年です。そして今でもヴィンテージフリークを虜にして止まない各社の象徴モデルがひとつの完成形を迎え、ジーパンのベンチマークが定まった時代とも言えます」

康二「それまでワークウェアであったデニムパンツが、第二次大戦を経て徐々にデイリーウェアになり、'50年代に入るとマーロン・ブランドやジェームス・ディーン、エルヴィス・プレスリーといったスタイルアイコンによって、若者たちのファッショナブルなアイテムへと存在価値を変えていきました。'60年代にはマリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーンがキュートに穿きこなし、女性にも急速に浸透します」

健一「以降、トレンドによってシルエットや色の濃淡など変化を繰り返しながら、ジーパンは常にカジュアルスタイルの主役であり続けています。老若男女、ありとあらゆる趣味趣向に受け入れられ、これほどまでに広く深く根付いている洋服は非常に稀有です」

初めてヴィンテージを穿いた瞬間
あの感動が忘れられない

康二「僕ら兄弟がファッションを意識してジーパンを穿くようになったのは、中学生のとき。当時は '80年代で、最初はセルビッジのないレギュラー古着の 501 でした」

健一「あの頃は大阪のラピーヌという古着ショップに通っていて、そこには<EVISU JEANS>創業以前の山根英彦さんが働かれていました。僕らが初めてヴィンテージジーンズの存在を聞いたのが山根さんで、昔のジーパンには赤ミミが付いているだとか、洗うと極端にネジれるといった基礎知識を教わって、何だか無性に惹かれましたね」

康二「それから間もなくしてセルビッジ付きの 501 を手に入れたのですが、穿いた瞬間に衝撃を受けました。フィット感、ポケットの位置や大きさ、色落ちの表情、何から何まで自分の知っている 501 とはまるで違う。あの感動は30年が経った今でも忘れられません。それで一気にヴィンテージにのめり込んで、未だに虜ですから」

資料として保有しているヴィンテージジーンズの数々

健一「レギュラー古着の 501に始まり、ヴィンテージ、あとはラピーヌがオリジナルで展開していた<RODEO UNCLE>、<EVISU JEANS>に在職していた頃はそれを穿き、<WAREHOUSE>を立ち上げてからは自社製品を愛用しているので、実を言うと、あまり色々なブランドを穿いたことがないんです」

康二「ひと口にジーパンと言っても、万人に定着しているアイテムだけに、テイストやスタイルは千差万別。どこに魅力を感じるかも人ぞれぞれです。僕らは完全にヴィンテージやクラフトジーンズ一辺倒ですから、専門外のジャンルについてアレコレと語るのは違いますし、さほど詳しくもない。だけど作り手としては “ ジーパンたるモノかくあるべし ” といった譲れない持論があります」

表層的なプロダクトで
知ったつもりになるのは哀しい

健一「まず生地を織る糸は、リング糸でなければなりません。現在、大量生産の安価なジーパンには、空気の力で繊維を綿菓子のように絡ませて紡績した空紡糸(くうぼうし)が多く使われています。生産性に優れてコストも安いのですが、強度に劣るというデメリットがあり、穿き込んで生地が伸びてしまうと回復しないんです。対してリング糸はコストこそ割高ですが、しっかりと撚りが掛かっているのが特徴で、生地が伸びても洗濯をすると復元し、再びシャキっと戻ります」

康二「空紡糸そのものは知る限りでは '30年代くらいからあり、主にアンダーウェアに使われてきました。強度が望めないのでデニムには不向きですし、デニムに用いる発想すらなかったと思われます。しかし '80年代後半の文献を調べると、当時のアメリカでは空紡糸のデニムが主流となり、風合いや色落ちの表情が極端に悪くなったと。また現地の老舗生地メーカーからも、同様の話を聞きました。僕らの実体験としても、その頃のメイド イン USA のジーパンは古い年代よりタテ落ちしなかった」

左/米国におけるコットンの紡績&機織り技術、その機械をまとめた1951年発行の文献。
右/非常に古い、アメリカの糸の見本台帳。

健一「加えて、キレイなタテ落ちを生むには不均一なムラ糸であることも不可欠。そして染料はインディゴ100%であること。なかにはヴィンテージライクな色合いを演出するために、別の染料を混ぜているメーカーさんもあるようです」

康二「染色方法は、糸の芯まで染まらず、中心が白く残るロープ染色が絶対です。さらに製織は、糸のムラ形状を最大限に活かすことができ、かつ両端にセルビッジの付いたデニム地になる旧式のシャトル織機に限ります。現代の革新織機は幅の広い生地を高速で織ることが可能で、生産効率は良いのですが、糸にテンションが掛かって引っ張られ、せっかくのムラ形状が失われてしまいます」

健一「縫製のミシンも、現在は製造されていないアメリカのユニオンスペシャル、ボタンホールはシンガーといったように、部位に応じてそれじゃないとダメ。縫い代も日本のセンチではなく米国式のインチ設定。他にも挙げたらキリがありません」

康二「コットンは米綿のみを使い、ボタンやジッパー、リベットといったパーツ、最終的な仕上げや加工まで、僕らは全工程において明確なルールに則ってものづくりをしています。それが、本来のジーパンの姿を突き詰め、四半世紀にわたって飽くなき探究を続けて辿り着いた答えです」

健一「近年では、セルビッジデニムを使った安価なジーパンがアチコチで販売されています。セルビッジ付きなら、どれもこれもヴィンテージと同等だと思われがちですが、まったく違います。本物を知らず、表層だけを模造したジーパンを穿いて、それでヴィンテージ気分を味わったつもりになるのは哀しいですし、何だか寂しいですね」

本質を突いた一本に脚を通せば
真の魅力に気付き、夢中になる

康二「<WAREHOUSE>の新機軸として好評を得ている『セコハン』シリーズは、一度、誰かが穿き込んだヴィンテージをテーマにしたコレクションです。なかでも<BEAMS PLUS>で取り扱いの LOT1105 は、アメリカで洗濯機や乾燥機が普及した '60年代のタイプをモチーフとしており、古着がそうであるように、丈上げせずともジャストレングスで合わせられる短めの29インチ設定。洗濯を重ねて完全に生地が縮み、趣深いエイジングが刻まれた、理想的なユーズド状態を再現してあります」

健一「もちろんジーパンの黄金期の製法にこだわり、防縮加工も施していないため、シワの入り方やアタリなどに個体差がある。いわば、実際にデッドストックから穿き込んだモノと変わらないので、新品にもかかわらず、ヴィンテージショップに並んでいるそれと同じように1本ずつ微妙に表情が異なります。そこから穿き込み、また洗濯を重ねることで体型に馴染んで唯一無二のカタチになり、さらに経年変化が加わって自分だけの逸品に育ち、愛着も湧きます」

康二「世の中では近頃、ジーパンが売れないと耳にします。ファッションには流行があるので、仕方ないのかもしれません。ただ生意気を言えば、そもそも魅力的なジーパンが少ないのではないでしょうか。大手ファッション通販サイトでデニムパンツを検索すると、膨大な種類のジーパンが表示されるものの、オーセンティックなタイプはほとんどない。今の時代、<WAREHOUSE>のような正統派は、むしろ異質なのかもしれませんね」

健一「とはいえ、ウチは変わらず順調ですし、<BEAMS PLUS>でもかつてないほどジーパンが好調だと聞いています。僕らは、ただただジーパンと真摯に向き合い、信念を曲げずに正統なものづくりを続けているだけですが、違いのわかるお客様には、それが伝わっているのだと自負しています」

康二「そうした本質を突いたプロダクトに脚を通せば、ジーパンの真の魅力に気付いたり、再発見していただけるでしょうし、より多くの方々がもっとジーパンを好きになるはず。30年前に初めてヴィンテージジーンズに脚を通して以来、こうして今も夢中である僕らのように」

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JPEN
PHILOSOPHY OF BEAMS PLUS

volume.13